無住心剣流・針ヶ谷夕雲のブログ記事
無住心剣流・針ヶ谷夕雲(ムラゴンブログ全体)-
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17.老いぼれ猫の境地
お鶴は元気になった。 五郎右衛門はお鶴が寝ている間は木剣を手にする事なく、彼女の看病と座禅だけに熱中していた。 座禅の中で、ひたすら自分を殺していた。 「御免なさいね。あなたの修行を台なしにしちゃったわね。すみませんでした」 お鶴は両手をついて頭を下げた。顔色もすっかり、よくなっていた。 ... 続きをみる
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16.夢想願流、松林左馬助
お鶴は二日めの朝になっても目を覚まさなかった。 焚き火がどんどん燃えている暖かい岩屋の中で、たっぷりと敷いた藁の上に、お鶴は寝ていた。落ちた時に打ち所が悪かったのか、体に熱を持っていた。五郎右衛門は座禅をしながら、小まめにお鶴の看病をしていた。 なぜじゃ。 なぜ、お鶴はあんな事をしたんじゃ... 続きをみる
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14.行くな戻るな、たたずむな、立つな座るな、知るも知らぬも
冷たい風の中、五郎右衛門は朝から木剣を振り続けていた。 昼頃、和尚がのっそりと現れた。 「おっ、また棒振り禅を始めたな」と言いながら目を細めた。そして、空を見上げると、「雪が降りそうじゃのう」と言った。 五郎右衛門も木剣を降ろすと空を見上げた。 「この辺りは雪が多いのですか」 「いや、それ程... 続きをみる
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11.新陰流を忘れろ
和尚の言われるままに、五郎右衛門はさっそく座禅を始めた。 岩屋の入口、いつも、飯を食べる場所に、でんと腰を落ち着け、目を閉じ、足を組み、座禅を始めた。 新陰流を忘れろ‥‥‥ 新陰流を忘れろという事は、剣術を忘れろという事か。剣術を忘れろという事は、刀を捨てろという事か。刀を捨てろという事は... 続きをみる
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8.焚き火を囲んで 2
「まあ、飲め」と五郎右衛門はとっくりを差し出した。 お鶴は笑うと空のお椀を手に取った。 「八百屋のナナちゃんのお話、知ってる?」 「知らん」 「じゃあ、話してあげる。ある年にね、江戸で大火事が起こるの」 「そういえば、江戸はよく火事が起こる所じゃったのう」 五郎右衛門は酔っ払って寝ていた時、火... 続きをみる
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7.焚き火を囲んで 1
焚き火の火が揺れている。 岩屋の中で五郎右衛門とお鶴は酒を飲んでいた。 お鶴が持って来たローソクがあちこちに灯され、岩屋の中は昼間のように明るかった。 「こういう所で飲むお酒も、また格別だわね」 お鶴は新しい藁束(ワラタバ)の上に座って、ニコニコしていた。 「わしはこの酒、飲んだ事あるぞ」... 続きをみる
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2.関ヶ原から大坂の陣
慶長五年(一六〇〇年)九月、関ヶ原の合戦が起こった。豊臣秀吉の死後、二年めに起きた天下分け目の決戦であった。当時、武芸者は八歳の少年だった。 関ヶ原の合戦の一月前、武芸者は父と母と三人で楽しい夕飯を食べていた。ささやかな暮らし振りでも、少年にとっては暖かい家庭だった。 その日、一日中、家の外... 続きをみる
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1.からっ風が吹き抜けた
上州名物のからっ風が吹いていた。 頬に突き刺さる冷たい風が音を立てて、砂ぼこりを舞い上げた。その砂ぼこりの中、街道に面した空き地に人だかりができている。道行く旅人たちが足を止め、声をひそめて見守っているのは二人の武士だった。 二人の武士は木剣を構えて立ち合っていた。 風に乗って、時折、笛や... 続きをみる